思ったことを好きなだけ

タイトル通り記録用の超個人的ブログです。音楽・旅行が好き。

160902 浮標 @世田谷パブリックシアター

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18:30

葛河思潮社 第五回公演
久我五郎 : 田中哲司
美緒 : 原田夏希
小母さん : 佐藤直子
赤井源一郎 : 谷田歩
伊佐子 : 木下あかり
お貞 : 池谷のぶえ
恵子 : 山﨑薫
利男 : 柳下大
比企正文 : 長塚圭史
京子 : 中別府葵
尾崎謙 : 菅原永二
裏天さん : 深貝大輔

 

***

 

3幕制で4時間公演、と聞いていたので観に行くのをちょっと怯んでいたのですが、口コミがかなり良かったのでずっと気になっていて、これを逃したらもう観れないかもしれないと思い、頑張って行ってきました。
ちょうど上京して来ていた母を道連れにして。

 

舞台には四角く囲われた白い砂地があるだけ。
そんなシンプルな舞台セットで構成されていて、画家の久我五郎と病気の妻、その周りの人々との交流を描いた作品です。
戦争の足音が近づいてくる時勢や、死にいく妻とそれを受け入れられない夫。
生と死が身近な人々の生活とはこんなにも生々しいのか、そんなことを終演後に思いました。
静かながらも、とても力強い作品でした。

 

久我五郎は初演から田中哲司さんが演じていらっしゃるそうですが、今回も熱演と呼ぶのが相応しかったです。
とにかく五郎は自分の仕事や妻の看護、友人の出征、借金など、様々なことに葛藤しているのですが、きっと最後は妻の存在がまるで自分の存在価値かのように思えているんだろうな、という風にも見えてきてしまいました。
それぐらい、何も失くしちゃっているから。
妻まで失くしちゃうと自分の居場所が分からなくなってしまうということなんだろうな、と最後は美緒を観ながら五郎を観ているような気持ちにもなり、不思議な感覚に。

 

原田夏希さんは舞台では初めてだったのですが、椅子の上から全く動かず表情だけで演技をする、という難しい役どころ。
か弱いながらも生への執着が感じられるような美緒を演じていて、透明感がすごいな、と感心しました。
小母さん役の佐藤直子さんがとってもよかったなぁ。
耳が聞こえないので、五郎や美緒との会話が噛みあっておらず、それでいて前向きで、まるで五郎と美緒との対角にあるかのような小母さん。
そのコントラストがとても鮮やかでおもしろかったです。

 

長塚圭史さんの作品はちょっと難しくて、わたしの頭ではついていけないことも多いのですが、4時間という長丁場でも集中力が切れることがなく観続けることができました。
これも貴重な体験ですね。
こういった古い戯曲も今観てもメッセージは伝わるし、作品の持つ力が強いものは引き継がれていく、そんなことも思いました。
そんな作品にまた出会いたいです。