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タイトル通り記録用の超個人的ブログです。音楽・旅行が好き。

160616 あわれ彼女は娼婦 @新国立劇場 中劇場

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18:30

ジョヴァンニ : 浦井健治
アナベラ : 蒼井優
ソランゾ : 伊礼彼方
ボナヴェンチュラ : 大鷹明良
ドナード : 春海四方
ポジオ : 佐藤誓
ブターナ : 西尾まり
リチャーデット : 浅野雅博
ヴァスケス : 横田栄司
ヒポリタ : 宮菜穂子
フローリオ : 石田圭祐
枢機卿 : 中島しゅう

 

***

 

新国立劇場での作品なので、ちょっと難しいのかな?と思っていたら、だいぶ難しかったです。笑
テーマがテーマだけに軽々しく感想を述べられる感じでもないのですが、シェークスピアと同じ時代の劇作家の作品だということもあり、現代の日本に生きるわたしにとっては宗教観や倫理観など、置き換えることが難しかったというのが本音。
ただ、一途に愛を貫こうとする兄妹の最期は美しくも哀しく、舞台セットと相まってなんだか神々しく見えました。

今回の作品で一番目を奪われたのは舞台セット。
舞台自体が大きな十字架のようになっていて、基本的にその上で役者さんが演じていることが多かったです。
特にジョヴァンニやアナベラはその十字の上にいることが多く、禁忌と愛の狭間で揺れ動く気持ちが表れているのかな、と思ったりしました。
死を選んでからは結局その十字架から引きずり降ろされ、それにも宗教的な暗喩が含まれているのかな、とも。

セットの十字架がとても目立つのですが、それを引き立たせるような照明の使い方もとても印象的でした。
軟禁されたアナベラの部屋には縦に一直線に引かれ、かすかにしか日が射していないことがよく分かったし、ジョヴァンニがアナベラの結婚式を遠くから見守るシーンの照明の使い方もすごく素敵でした。
あとは、周りには赤や黄色の紅葉した落ち葉のようなものが敷き詰められており、それもまた美しくて、マリンバが奏でる音楽・照明・舞台セット、これだけでなんだか見る価値があったような気になります。

兄妹の姿が神々しいと先ほど書きましたが、頭脳明晰な兄を演じた浦井くんも、一途に強く兄を思い続けた蒼井優ちゃんも、色々な禁忌を犯しながらも自分を貫く姿が凛々しく、役者さんたちの熱演に目が離せませんでした。
この2人の共演は新感線の五右衛門ROCKで観たことがあるのですが、ちょっとおバカなシャルル王子や、女盗賊・猫の目お銀としてニャンニャン踊っていたとは思えない2人で、面影すらありません。
浦井くんや優ちゃんのまったく違う姿が見れて、役者さんってほんとにすごいな!と素直に感動しました。
浦井くんは最後若干キラ(byデスノート)っぽくもありましたけどね。

主演の2人もよかったですが、個人的には横田さん演じるヴァスケスがとても熱くて、どこか現実離れしているジョヴァンニとアナベラと対比するようでおもしろかったです。
そのアンバランスさが作品に現実味を与えていたというか。
蜷川シェークスピアの申し子のような横田さんが、同じ時代の作家であるジョン・フォードの作品で演じているというのも興味深く、やっぱりこういう劇で演じるのがうまいなぁと惚れ惚れしました。
声のトーンとか聞き取りやすさとか、もう抜群ですよね。

作品としてのおもしろさだとか、共感するとか、そういった楽しみ方はできなかった作品ですが、視点を変えると色々なところにポイントがあり、結果的には背筋がピンと伸び、思わず引き込まれていたような経験をした作品でした。
体力的にも精神的にも役者さんたちはつらそうですが、観る方も少し体力を使うかもしれません。
それでも役者さんたちの熱演に引っ張られ、舞台セットに驚き、演劇の持つ力に圧倒されたような気がします。

蜷川さんのシェークスピア作品がまた観たいな。