思ったことを好きなだけ

タイトル通り記録用の超個人的ブログです。音楽・旅行が好き。

140510 わたしを離さないで @彩の国さいたま芸術劇場

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八尋 : 多部未華子

もとむ : 三浦涼介

 
***
 
初めて蜷川幸雄作品に挑戦。
ほとんど内容を知らないまま行ったので色んな面が衝撃的でびっくり。
まず上演時間から衝撃。三部構成って初めて。
後にうっかり予定入れなくてよかったです。
 
ストーリーは映画化もされているし原作もあるので触れませんが、日本版に再設定されていて、名前も日本名に変わっていたようです。
八尋、鈴、もとむという3人を中心に話は進んでいきますが、この若手3人の演技がとても瑞々しくて素晴らしく、とても難解な役をしっかり演じていたのが印象的な作品でした。
 
多部ちゃんはなんであんなに母性溢れる演技ができるのでしょう。
鈴に対してももとむに対しても、包み込むような優しさで凛と立っている。
何もかもを悟ったかのようなその姿が、最後わたしには逆に辛かったです。
鈴は友情を、もとむは愛情を八尋に向けるのですが、もしかしたら鈴ももとむも、八尋には友情や愛情を超えたものを感じていたのではないかな、と少し思ったりしました。
八尋に包まれることで許しを得たいというか。。
誰かに望まれた存在だと思いたい。
誰かに愛されたい。
自分たちにだって心はある。
八尋だって自分たちと同じなんだけど、八尋なら許してくれる。
そんな気持ちを八尋に向けていたのかもしれないな、と今思い返すとふと思ったりしました。
 
もとむ役の三浦涼介さん、この時初めて拝見したのですが、役にぴったりでもの凄くハマっていました。
ちょっと弱そうなところも優しそうなところも、演じることはすごくつらかったと思いますが、観ているこちらとしては目が離せませんでした。
ちょっと虚ろな目も子供みたいな笑顔も、そして最後の慟哭も胸に焼き付いて離れません。
 
木村文乃さん演じる鈴もちょっと勝気な雰囲気がとても良かったです。
鈴は色々と八尋やもとむに対して罪を犯すわけですが、なんとなく心情は理解できる。
(本当の意味で理解はできるわけないんだけど、敢えてここではわたしたちと同じく心を持っている、と思って書いています。あしからず。)
初めはきっとこんなに大事になるなんて思っていなかったんでしょう。
一歩踏み出してしまえば、引っ込みがつかなくなることってありますよね。
きっと鈴の一歩もそんな気分だったのではないかな、と観ていて思いました。
最後の車椅子での鈴と、八尋ともとむ。
三人の気持ちを思うと何とも切ない。
 
前知識がなくても1幕途中から普通の話ではないな、と分かるのですが、物語が進むにつれ3人の真っ直ぐな心が突き刺さる度に、人間のエゴがドロドロと溢れだすような気がして、わたしはどうすればいいのか分からなくなってしまいました。
なんて感想を抱いたらいいのかさえ分からないようなそんな気分。
いつかこんな世界が来たらどうしよう。
心を忘れてしまったらどうしよう。
そんな焦燥感も抱かせるような作品。
最後はひたすら胸が痛くて泣きました。
ヘールシャムのあのスローモーションは反則ですよ…
 
ふぅ。
作品のメッセージが強すぎて、わたしはもうこれ以上書くことができません。
何を書いても薄っぺらいような気がして。
生きることなんて考えても考えても答えは見つからないので。
でも、彼らにとっては『生きること=幸せ』ではなかったのかもしれない。
だって初めから決まっているから。
 
それでも、それぞれの最期の瞬間には愛に包まれていてほしいと願ってやみません。